甘味処[斬殺]
「…それで、何なんだ?殺されたいなら、そう言えばいつでも試みてやるが」

二人は広い部屋に置かれた大きなソファの端と端に座っていた。ちょうど、昼間公園のベンチに二人で座ったように。
ようやく涙の跡を服の袖で乱暴に擦って消してから、祐樹は笑顔になって言った。

「それもあるけど。今日は、ちょっと違うんだよ」

その悲しそうな笑みを見せられては、流石のサリーも事情が気になった。大抵のことに無関心であるサリーだが、今回ばかりは溜め息混じりに言う。

「…話してみろ。」

祐樹は全て話した。大好きな棗と鉄人に殺人の現場を見られたこと。震えが止まらなかったこと。その時の心境まで、全てをサリーに話して聞かせた。

話し終えて、祐樹はサリーをちらりと見る。やはり無表情で思案している様子だったが、祐樹が見ていることに気付いて、フンと小馬鹿にしたように笑った。

「存外に繊細な奴だ。もっと図太いと思っていたが」

「サリー、僕は真面目に…」

怒った祐樹が怒鳴ろうとした時、サリーは腰を上げ、再び腰を下ろしたのは祐樹の隣。一瞬祐樹は口をつぐみ…それから、小さな声でぽつぽつと不安を語り始めた。

「…僕、怖いんだ。このままずっと、人間がみんないなくなるまで…ずっと殺し続けなきゃいけないのかな?一人ぼっちになるまで殺して、それから狂って死ぬまでずっと一人ぼっちで…そんなの、やだな」

そう言ってまた泣き出しそうな顔をする祐樹の肩を、サリーは抱き寄せた。
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