レイコーン
 
「館の主人は噂だと人食いの老人らしいぞ!でな、その館に行ったものは誰も元の姿では帰ってこないんだってさ。」
 
と、ニコスは自慢げに話す。

ニコスは最近この街にやってきた少年で
黄色い瞳に跳ね馬のような黒髪をしている。
けらけらと笑うのが特徴だ。
 
噂話が大好きでどこからか不思議な話を持ち込み、
好んで話題にしていてるが
不思議とどこか落ち着いた雰囲気を持っていた。
 
ニコスはまず最初に同級生のマールに噂を広めるのが日課だ。
 
マールは茶色い髪と赤い瞳の内気な少年で、
いつもニコスの話を楽しそうに聞いていた。
 
 
「一度行って見たいよな~♪じゃあな!」
 
 
メビウスの路地の話をするのはこれで7回目だ。
毎日毎日。まるでマールに異世界への行き方を説明するかのように話すニコス。

「門の隅のほうに湿ったごみ箱があるんだろ?」

「そうさ、よくわかってるじゃないか。じゃあなマール!」

そしてマールの感想を聞く前に
言いたいことを言ったら
そそくさと、どこかへ行く。
 
マールの目には
彼は噂話を広めることが好きなのだろうと写っていた。
 
 
「ええっと…。」
 
 
マールは彼のことをほとんど知らない。
 
ニコスは休み時間になると、
マールに熱心に噂話をしに来る少年。
ただ、それだけの関係だった。

他の子たちもニコスについて
それ以外のことは知らなかった。
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