レイコーン
休み時間というものは
特定の友人のいないマールにとって見ればとても孤独な時間だ。

遊戯で遊んでいる子、
友達と楽しそうに会話している子は
何十もの壁で仕切られた別世界の人間に見えた。
 
 
 
ショーウインドウから見ている世界は
手を伸ばしても決して届くことはない空のかなたにある。
 
 
10歳になってからというものの
誰かとちゃんと話をした記憶がない。
 
もともと多弁な方ではないマールは
友達もいつの間にか離れて行ってしまった。 
 
そんな部厚い壁を平気で突き破って別世界からやってくる情報屋ニコス。
マールには彼の姿が少しだけ、うらやましく見えているのは間違いない。

 

普段、マールは教室の自分の机に座り
次の時間の教科書の準備をする。

 

準備って言っても
教科書をかばんの中から用意する程度で
終わった後は、する事もない。

 

仕方無しに
無駄に教科書のページ数を何度も何度も数え、暇を潰す。
いつしかそれは日課となってしまった。

 

「数学は192ぺ-ジ…か。」

 

と、つぶやたマールの言葉にはため息が混じる。
いつの間にやら数学の教科書の
全ページ数まで覚えてしまった虚しさを肌で感じていた。
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