レイコーン
 
「だまされたと思って飲んでみなさい。」
 
もうすでに騙された感はあったものの
マールは王が差し出す2杯目のジュースを一口いただいた。
 
「…あれ?」
 
一杯目とは違いその味は大きな大きな空の空気を一点にかき集めたかのような
清清しくも甘くそれでいて上品な味をしている。

一口飲むたびに体の中の悪いところが洗い流されていくようで
あっという間にマールは2杯目のジュースを飲み干した。
不思議なことにさっきまでだるかった体が嘘のように体調も万全だ。
同じものなのに違う味がする。
 
「その2つとも王家が代々守っている水からつくったものなんだよ。最初のは今年のもので次のは昨年のものだ。」
 
王はマールに説明しながらビンを並べた。
 
「この水はな『神鳥の水』と呼ばれていて源泉はこの国の神鳥レインバードの巣にあるといわれておる。
世界で一番美味い水じゃ。わが国は、元々この神鳥の水で知られた国でな、米やパンを作るときにこのアルバータの水を使うと美味いものができると評判だったのだよ。そのおかげで百年前までは唯のオアシスを囲む城だった場所が今じゃ食の街へと呼ばれる街にまで発展していったんじゃ。」
 
世界で一番美味い水。そして調理向き。
そんな水があるのなら腕に覚えのある料理人はこの街へ行きたくなるだろう。
 
「そんな大切な水なのにここ最近水の様子がおかしくてな。これは第一級の機密なんじゃ。この水を、生活の場へと流すわけにもいかん。まだ、淀みは少しですんでいるみたいじゃが原因は不明。水がひどくなったのにはおかしな奴らがうろついていると噂もあるし、神鳥の不調とも言われておる。わしが行って兵を向かわせたいのは山々なのじゃがあの辺は仲の悪い国との国境付近でのう。兵を動かすわけにも行かん。マール君、神鳥の巣の様子を見てきてはくれんか?」
 

「どうして僕なんですか?」
 
 
マールは不安そうに王に尋ねた。
 
 
「そのタマゴ」
 
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