月と太陽の事件簿12/新幹線殺人事件 静岡‐掛川間49・1キロの謎
「どうしたのよ、いきなり」

あたしの呼び掛けにも答えず、達郎はずんずんと歩く。

やがて駅構内の自動販売機の前で立ち止まると、小銭を取り出して、カフェオレを買った。

唐突に缶コーヒーが飲みたくなったのだろうか。

かがみ混む達郎を見ながらあたしは思った。

…いや違う。さっきの様子はそんなことでは説明つかない。

「オレがはじめて事件を解決した時…」

缶コーヒーを手にしながら、達郎は口を開いた。

「はじめて事件を解決した時、たまたま缶コーヒーを手にしてたんだ」

「それで?」

淡々とした達郎の口調にまさかと思いつつも、あたしは言葉を続けた。

「まさかあんた、それ以来缶コーヒーを持つと頭がひらめくとか言うんじゃないでしょうね」

達郎は否定しなかった。

「そんなワケないじゃない、マンガのキャラじゃあるまいし」

あきれ返って達郎をにらみつけた時、達郎と目があった。

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