天国の丘
「アタシがちゃんと化粧して上げるから、男共が皆びっくりして腰抜かす位、綺麗になるよ」
二人はステージ裏の、楽屋替わりに使っている部屋へ入って行った。
一人になった僕は、何気無くレコードが収められたキャビネットを見回し、ある事を思い付いて、それを探し始めた。
二千枚近くあるレコードの中からそれを探すのに、思った程時間は掛からなかった。
前に一度、マーサがそれを引っ張りだしたのを見ていたので、その場所の見当は大体ついていた。
『サッド・マン・スリー』のレコードは、思っていた程多くはなく、T・Jのソロアルバムも含めて五枚しかなかった。
その中から僕は、サックスを演奏中のT・Jが表紙になっているレコードジャケットと、三人が揃って写っているレコードジャケットの二枚を取り出した。
ステージの隅にあった楽譜立てを中央に置き、反対向きにして、そこに二枚のレコードジャケットを並べた。
遺影がわりにしては、ちょっと洒落てる。
我ながら、なかなかのアイディアだなと思い、更に照明の位置を変えて、よりジャケットを効果的に見せる工夫をした。