キミの心の声を聞かせて

帰り道、いつもと変わらない雄大の背中を、少し離れて見ながら歩いた。


今、もしも雄大にあたしの気持ちを伝えたら…。




やめた…考えただけで怖い。


「智樺」



「なに?」



不意に名前を呼ばれて足を止めた。

「明日さぁ、花火あがるの知ってた?」


立ち止まり、後ろを振り返って雄大が言った。

あたしは「知らなかったよ」と平静を装い言うんだ。


次に雄大の口から出る言葉を、今のあたしはきっと全部いいように解釈してしまうと想うから。



きっと、雄大のことだから…


「あした、一緒に見れるなぁ、花火」

「そうだね」

悪気もなく、子供みたいにハシャいで言うんだ。だからって、ここで期待したらダメなんだ。


だって雄大が一番大切なのは


「みんなで見る花火って最高だよなぁ」

“1人の女の子”じゃなくて“仲間としてのあたし”なのだから。


そしてあたしは、何もない顔して言うんだ。


「うん、楽しみだね」


…って…。涙、心の奥に隠して笑っていうんだ。

キミのそばにいたいから。




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