キミの心の声を聞かせて

その視線から逃れるようにシュンの横を通り過ぎて


「早く行こうよ」と駆け出した。


「なに急に走ってんだよ?」


そう言って追いかけてくる雄大達に


「早く行って練習しよう」


そう言って廊下を走った。


きのうシュンから言われた言葉が、頭の中で繰り返し響いてる。


“なんで好きって言わねぇーんだ”


“自分ばっか苦しんでんじゃねぇ”



シュンが言ってる事は正しいと思う。

シュンの言う通り、いつまでも自分の気持ちに嘘ついて誤魔化して生きるのってつらいよ…。



自分で勝手に雄大の“妹”になったつもりでいても


あたし、ホントの“妹”じゃないもん。


好きって気持ちに蓋をして一番奥に閉じ込めたはずなのに

「智樺、待てって!」

追いついた雄大から、後ろから肩を回されて「お前早過ぎだって」とニカッと笑われた。


「捕まったかぁ」となんでもないように笑うけど


ちょっとした事でぐらついて、好きって気持ちが溢れそうになるんだ。



あたしが、雄大の好きな人ならよかったのにな…。




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