浮気女の嫁入り大作戦

 樹は驚いた顔をして、即答はしない。

 奈緒は笑顔のままだ。

 ふと静かに微笑んだ樹は、

「いいよ、そんな面倒なことしなくて」

 奈緒の顔が一瞬凍りつく。

 そしてすぐに笑顔に戻った。

「え? どうして?」

「俺はね、美味しいものを食べに行くのが好きなの」

「あたしの料理は美味しくなさそう?」

 彼は気付いていないようだが、俺にはわかる。

 奈緒は今、すごく胸を痛めている。

「そうじゃないよ。ただ、俺は外食が好きなだけ」

 奈緒の料理が食べたくなくて言っているのではない。

 それは彼女自身わかっているようだが、つまるところ、樹は奈緒の料理に興味がないということはよく理解できた。

「じゃ、じゃあ、今日はあたしがおごるね。ほら、いつも出してもらってるから」

「え? あ、そう。じゃ、お言葉に甘えるよ」

 笑ってはいるが、奈緒のストレスがまた少し膨らんだ。

< 18 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop