浮気女の嫁入り大作戦
互いにまくし立て合う二人を、通行人が迷惑そうに見る。
察した花枝が沢田の肩に触れると、彼はそれ以上言うのをやめた。
俺も同じようにして、奈緒を黙らせる。
次の青信号で、やっと二人は横断歩道を渡った。
無言のまま奈緒の住むアパートまでたどり着くと、階段を上る前に沢田が立ち止まった。
「ごめん。なんか、勢いで結婚してとか言っちゃったけど、返事は聞かなくてもわかってるから」
「……あっそ」
「じゃ、俺帰るね」
沢田が踵を返そうとしたとき、俺の肩に何かが触れた。
花枝の手だった。
花枝はいつかのように、笑顔で俺の肩を撫でる。
そっと手を伸ばすと、今度は空を切らず、確かに花枝の感触があった。
「そうね。で、次はいつ来るの?」
「え?」
「あんなんじゃダメよ。やり直し」
奈緒は腕を組み、強気な視線を送る。