浮気女の嫁入り大作戦

 俺は家柄も悪くないし学歴もあり、将来有望な青年だった。

 自信に満ち溢れていた。

 やがて来るであろう花枝との輝かしい未来のために、より一層学問に打ち込もうと気持ちを高揚させた。

 しかし、時代は昭和初期。

 当時は歴史上、第二次世界大戦の真っ只中だ。

 国に娯楽から食料まで様々なものを制限され、暮らしはどんどん窮屈になっていく。

 誰々が徴兵されどこどこに行った。

 どこどこに行ったあの人が撃たれて死んだ。

 ……なんて話をたまに聴いては世の中が鬱蒼に思えたりもした。

 全てはお国のため。

 天皇陛下のため。

 この一時を乗り越え我が国が勝利をおさめれば、より豊かな未来が待ち受けている。

 花枝と穏やかな空を臨めば、希望はもうすぐそこにあるような気がしていた。

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