ACcess -焔-
形が一つ古いデジカメを手にとった。

二ヶ月前に友達から安く買ってから、袋に入れてそのままだったのを思い出した。

フォルダには何も入っていない。

きっとこれからも何もここには入らないんだろう。


ベッドに仰向けに転がり、画面ではなく、ファインダーを覗き込んだ。

そこには当たり前のように天井が写る。

それ以外に何が写り、何が写らないというのだろう。


静かに起き上がり、レポートのファイルを閉じた。

次にマウスがクリックしたのはクロファンのアイコン。

急いでメールをする。

返事はすぐに返ってきた。

今までうっすらと自分の回りを取り囲んでいた色彩が、急に濃くなった気がした。


気付いたらこの世界だった。

途中で何回か他のアバターとぶつかったが気にせず、息を切らしながら走った。

ホームの前に着くと、一度息整える。
そしてノックする。
「おーっ!ドンクレ!
 今日は早いな。どうかした?」

君の微笑みに泣きそうになる。
「…いや、ちょっと時間できたから。」
「なーる!
 じゃあさじゃあさ、バザー行こうと思うけど…どぉ?」

輝く眩しい笑顔に頷いた。

自分にはその眩しい笑顔しか見えなくなっていた。
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