LAST LOVE -最愛の人-
「会えないと浮気するだろうし、それによって傷付けるし、恨まれるし、無駄にしんどいし、付き合ってるメリットまるで無しなんです」


「はぁ」


芽依は呆気に取られた。
翔の言葉は何故か堂々としていて、まるでそれこそが正しいかのように聞こえてしまう。


「そこまでの気持ちが無いなら、最初から付き合わなきゃいいじゃんね~」


ふわふわのパーマを当てた長めの髪が、揺れた。

御手洗いから戻ったであろう理子が、よいしょと言いながら芽依の隣に腰を下ろす。
相変わらずその表情はにこにことしており。

芽依ちゃ~ん、と甘い声を出しながら腕に絡みついてくる。





「それは間違いないですね、東サン」


威勢の良かった翔が、はじめてバツが悪そうに苦笑を漏らした。

店長はそのやり取りをきょとんと眺めると、やはり笑っていた。





***


「あのね、結城サン」


「何よ」


飲み会の帰り道は、いつも終電を無くしてしまうため、皆でぶらぶらと歩きながら帰る。

酒が回っていることと、集団でいるおかげで、その道のりはあまり苦では無かった。


「俺もね、滅茶苦茶好きな子が居ました」


「告白して、振られて」


いきなりの翔の告白に、芽依は言葉を挟めない。

翔は翔で特に反応を求めていないのかもしれない、そのまますらすらと言葉を続ける。


「でも、誘ったら遊んでくれるんですよ。ずるいんですそいつ」


「キスもしました。でも彼氏が好きで、やっぱり俺とは付き合えないらしくて」



「俺は所詮都合の良い遊び相手。一時はそれでも一緒に居られるならいいやって思ってました」



自嘲気味に翔は笑みを零す。



「でもやっぱ辛くて、忘れなきゃいけなくて、他に好きな女の子を探して遊んで」


いまだに翔はその気持ちを忘れられないでいるのかもしれない。
翔のその表情を眺め、芽依はふと感じた。だが、口には出さなかった。



「恋愛経験積んでたと思ってたんですけど」




「結局今考えても『恋愛ごっこ』ばっかでした」

< 16 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop