LAST LOVE -最愛の人-
「3組バンザーイ!!!」





カラオケの一室。
委員長がマイクを独り占めしていた。



「オマエうるせーよ、マイクの音量下げろって」



罵倒されても委員長は怯もうとしない。
むしろその罵倒の声の主の顔を見つめては、にやにやと笑みを浮かべた。




「島井バンザーイ!!」







芽依が二位で繋いだバトンは、その後前後すること無く僅差を保ったままアンカーである泰紀に託された。

そこから見せた大逆転劇は、誰もが目を見張るものであった。

一位に躍り出、追随に大差をつけゴール。

早い話が、泰紀の活躍によりクラスは優秀に導かれた、というわけだ。




「はぁ?オマエ歌わないならマイクよこせ!」


委員長は皆を喚起し、島井コールを続けている。


それを横目に芽依は微笑んだ。



「別に照れなくてもイイじゃん」


「照れてねーよ」


「照れてるし」


「んなわけねーし」


「意地っ張り」


「知らん」


泰紀はそのまま無表情で目の前のコーラに口をつけた。


「童貞のくせに」


「…ブッ!!」


炭酸が勢いよくストローから飛び出る。


「ヤダ!きたなっ!」


「…オマエな、女子が言うな女子が」


「だって島井が言ったんじゃん『オレは童貞だ!』って」


「ハァ?!抜けてるだろ!『赤点が』だよ!あーかーてーん!!」

その必死さに芽依がくすくすと笑いを漏らす。


「くっそ調子狂う…」


脚を組み直すと、芽依にそっぽを向いて再びコーラのストローに口をつけた。


「島井」


「なんだよブサ……」


泰紀が言い切らないうちに芽依が言葉を紡ぐ。




「ありがと」




芽依の強い瞳が、泰紀をじっと見据えた。


スタート直前、芽依の緊張の糸を解いてくれたのは泰紀だった。

諦めそうだった時、持ち直すことができたのも泰紀のおかげだ。



「ありがとね、島井」




泰紀がくわえていたストローがほろりと床に落ちる。
先程からコーラは全く減っていないようで。
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