LAST LOVE -最愛の人-
「ね、芽依は好きな子居ないの?」


「うーん…今は、微妙」


「何それ?」


二年の冬、スキー合宿。
夜の女子部屋の会話は決まって恋愛話だ。


「芽依ってモテるくせに彼氏作らないから、てっきり超好きな子が居るのかなって」


「てか、好きな子が居ないからって簡単に付き合う綾羽のほうが異常」



九柳綾羽[クリュウ アヤハ]

綾羽とは中二になってから同じクラスになり、急に仲良くなった。

サバサバした考え方、特におだてや社交辞令の無い素直な意見をぶつけてくれる面に好感が持て、一緒に居て楽だった。

実はかなりの家元のお嬢様らしいというのは後から知った。

長い黒髪をいつもバッチリ巻いており、アイメイクも完璧で、かなりの美形。
女子からも憧れられるような存在だった。


「経験って大事じゃん?」


さも自分のことは興味無さ気に応える綾羽。


「そんなにポイ捨てしてると、恨まれるからね」


「あはは」


枕に顔をうずめた。

実際、二年になってからというもの、綾羽ほどでは無いが芽依はモテた。


告白されたことも何度もあったが、そのどれもが話したことも無いような相手で、本当に自分のことを好きでいるかすら疑わしかった。


(見た目だけで好きっての、なんか信じらんないんだよね…)





和室は6人部屋。

芽依と綾羽以外のルームメイト女子が、エントランスでお土産を買ってきたのであろう、ビニール袋と財布を片手に部屋に戻ってきた。


「ね、芽依、綾羽。どうするの夜?」


既に敷かれた布団に潜り込むと、小声で嬉しそうに呟く。


「どうするっ…て?」


「決まってんじゃん、誰の部屋に行く?」


宿泊施設での男女間の部屋の出入りは禁止だ。

しかし皆はハナから守る気は無いのだろう。禁止されているがゆえに、逆に盛り上がっているようだ。


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