LAST LOVE -最愛の人-
「だからね、今芽依の好きな人を聞いてたんだけど、微妙らしい」


綾羽が枕を抱きしめながら芽依に向かって『ねー』と笑む。


「大地が、芽依誘いに来るかもって言ってたけど、その話?迷ってんの?」


「しっ、知らない、知らない!無理!」


芽依は慌てて首を振る。
『うわ大地告る前から振られた~』と女子は盛り上がっている。



「私は、ただ…」


「ただ?」


盛り上がる外野をよそに、綾羽だけがニコニコと芽依の言葉に耳を傾けていた。


「し……」


「し?」


他の女子には聞こえないように、綾羽にだけそっと耳打ちをする。



きっとまだ誰にも伝えたことの無い、初めての告白。










(─────島井、が、気になってる)










綾羽の顔が俄かに曇った。


それを『やっぱり』という風に捉えるしか、芽依はできなかった。













二年に入って、泰紀は急に変わった。
学校を休みがちになり、陸上部も辞めた。

髪の色も校則に違反するくらい明るい色に染め
あまり評判の良くない集団とつるむようになった。

近付いたと思っていた芽依との距離も離れ、今までのように軽口を言い合うことも無くなった。


悪い噂は更に人の言葉を介し誇大に広がる。


ホストの手伝いをしている
大麻を隠し持っている
少年院に入っていた
売春の仲介に携わっている


どこまでが本当なのか芽依は知らない。
しかし泰紀がそんなことをする人間だとは信じられなかった。











───忘れもしない、青空の下での泰紀の笑顔。

ただそれだけを信じていた。


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