憎悪の視線
 しばらくすると、左右に揺れた身体が止まるのと同時に、呪文のような言葉も止まった。

 私は思わず百合子と顔を見合わせ、首を傾げた。


「大変じゃ。広子さん、あんたは邪悪な悪魔に魅入られとる。十分気をつけなさい」


 え? どういう意味なのかしら。

 私が詳しく訊く前に百合子が椅子から立ち上がり質問した。


「どういう意味ですか? 広子は今妊娠してるんです。悪魔に魅入られてるって一体……」


「妊娠しているのは、お腹を見れば分かる。広子さんは誰かに狙われておるということじゃ」


 私も百合子も、最近私が誰かに見られている気がすることを占い師に伝えていない。心を見透かしたような答え……。この占い師は本物かもしれない。

 私はそこでようやく声を出した。


「一体私は誰に狙われているのでしょうか?」


 すると占い師は首を横に振るだけだった。


「広子は、どうしたらいいんですか?」


 百合子は半分泣きそうな表情で占い師に尋ねたが、「分からない」としか解答は得られなかった。
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