憎悪の視線
三十分後、典男は私の部屋に来てくれた。
玄関の鍵も開いたままだったので、典男は異変を感じたのだろう、すぐ私がしゃがんでいる部屋の真ん中まで来てくれた。
「何なんだこれは! 広子、まさかお前自殺しようとしたんじゃないよな。最近ずっと誰かに見られてるかもしれないって神経質になってたし……」
「違うわ。私のお腹には典男の赤ちゃんがいるのよ。それなのに自殺なんてしないわ。帰ってきたら、こんなふうに首吊りのロープが下げられてて……」
典男はすぐさま理解し、首吊りのロープを外してくれた。けれども私が落ち着くのを見て、云い辛そうな表情をしている。
「あのさ……、俺仕事途中で抜けてきたんだ。一緒にいてやりたいけど……」
「分かってるわ。ごめんなさいお仕事中だったのに。もう大丈夫だから、会社に戻って」
「ごめんな。今晩は接待もあるから来れないと思うけれど、戸締りしっかりして気をつけてくれよ」
心配そうにしている典男を見たら、引き止められるはずもない。
そして私はその夜、眠れない一夜を過ごした。
玄関の鍵も開いたままだったので、典男は異変を感じたのだろう、すぐ私がしゃがんでいる部屋の真ん中まで来てくれた。
「何なんだこれは! 広子、まさかお前自殺しようとしたんじゃないよな。最近ずっと誰かに見られてるかもしれないって神経質になってたし……」
「違うわ。私のお腹には典男の赤ちゃんがいるのよ。それなのに自殺なんてしないわ。帰ってきたら、こんなふうに首吊りのロープが下げられてて……」
典男はすぐさま理解し、首吊りのロープを外してくれた。けれども私が落ち着くのを見て、云い辛そうな表情をしている。
「あのさ……、俺仕事途中で抜けてきたんだ。一緒にいてやりたいけど……」
「分かってるわ。ごめんなさいお仕事中だったのに。もう大丈夫だから、会社に戻って」
「ごめんな。今晩は接待もあるから来れないと思うけれど、戸締りしっかりして気をつけてくれよ」
心配そうにしている典男を見たら、引き止められるはずもない。
そして私はその夜、眠れない一夜を過ごした。