キミが居た病院

 扉の方を凝視するが、誰も入ってくる気配が無い。

 配膳係のおばちゃんなら返事しなくても入ってくるのに……

「はーい」

 恐る恐る返事をしてみた。


 ――左手にナースコールのボタンを握ったままで。

「ちょっと貴方開けてもらえるかしらー? カートのせいで上手く出来ないんですー」

 相手の声を聞いて、思わず脱力してしまった。

「今行きます!」
 
 声の感じや喋り方は知らない人だったが、誰もいないというオチより何百倍もマシだ。

 それにこないだおばちゃんが、新人さんが入る事になったって言っていたので安心できた。


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