ただ あなただけ・・・

玄関を出ると、一台の黒い車が止まっていた。ドアマンが五十嵐に鍵を渡している。


「妃奈、おいで」


なかなか来ない私を五十嵐は呼び、助手席のドアを開けて待っている。


車の中に入ると、五十嵐の香水の香りだろうか、ふわりと匂いがした。


――あ・・・この香り・・・――


何故だろう?すごく落ち着く。初めて抱きしめられた時も安心した。


ぼーっとしていると、いつの間に車に乗ったのか、五十嵐はシートベルトを締めていた。


私も慌てて締め、車は発進した。
< 25 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop