揺れる
 季節が色付き始めた頃、黒猫は不意に白猫が戻ってきていないことに気がついた。



 妙ではあったが、白猫を呼ぼうとはしなかった。



 その内、またひょっこり顔を出すに違いない。



 しかし、気がついてから七回太陽が沈むのを見たが、白猫は戻ってこなかった。



 七回目の月を見つめながら、黒猫は不意に、一度白猫を呼んでみた。



 鳴き声は返ってこない。


 もう一度呼ぶが、それでも返ってこなかった。



 それでわかった。



 もう白猫は戻ってこないことに。



 その現実はわかったが、黒猫は再び、なき声を上げた。



 きっと、次は大切にするから。



 優しくできるから。



 まるでそう言っているかのように、か細く切な気な声で、白猫を呼び続けた。



―おわり―
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