SOUND・BOND
陸燈の何度目かの溜め息に薫季は苦笑を漏らした。
結局強引に促されるまま、車道の向こう側にあるファミレスに向かうことにした陸燈。
愛車のSSにギターケースを乗せ、そのまま一緒に押して歩く。
身長も然程変わらない薫季から、簡潔に仲間の紹介をされた。
それを聞いているんだか聞いていないんだか分からない態度にも、彼は気を害することなく、ひとりで喋り続けた後のこと――
「百歩譲って怪しくないとして、じゃあ一体あんたら何なんだ?」
まだ棘のある喋り方は抜けないが、真空が喜んでいるのなら仕方がないと少し諦め始めていた。
それを隣を歩く薫季は苦笑交じりに簡単に答えて寄こした。
「ただのバンド野郎だけど?」
「はい?」
「ああ!AKIには気をつけた方がいいぞ?彼、人の弱点見抜くプロだから」
弱点。
見抜く……?
なにがなんだかさっぱりだ。
「逆に、その人の個性、長所、思考もずばずば言い当てる」
最後の思考は胡散臭いが、あとの二つは意外と外れていないかもしれない。
(なんとなく今、弱点を握られている気がする……)
陸燈は真空と、その手を引く秋司をまじまじ見つめる。
「どうかした?」
黙りこんだ陸燈に薫季が窺い見る。
(やっぱり……)
気を付けるもなにも、既に手遅れだった。
「あの手かあぁ……」
ついつい項垂れ、口から突いて出る。