SOUND・BOND


ここに来ているのは高校生以上の大人だ。小学生の姿は真空くらいだろう。そんなところに一人きりにするのは心配だった。
 
辺りを見ながら考えた末思いついたのは、


「ステージの脇からでも見れるけど?」
 

そこなら彼女の姿が確認できて安心だと思った。
 
この説得になんとか素直に頷いてくれることを期待したのだが……。


「ううん。正面から見たいの!」
 

あえなく撃沈。陸燈はひとつ息を吐く。
 
初めての経験で、決して譲りたくないのだろう。繋いでいる小さな手に力が入る。


「でも、こんな後ろからじゃ見えないだろ?」

「大丈夫!一番前に行くから」
 

最後の説得もあっさりかわされてしまう。
 
一番前か、と陸燈は目を向ける。
 
座り客の前は確かに少し隙がある。それに真空の身長なら、それほど邪魔にはならないだろう。


「分かった。その代わり、そこから絶対に動くんじゃないぞ?」

「は~い♪」
 

煩い音をも楽しげに耳を塞ぐ真空。
 
一番前で聴けることが余程嬉しいのか、彼女の体、そして返事も弾んでいる。


(まあ、仕方ないか)
 

陸燈は苦笑する。


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