SOUND・BOND

可愛い妹のはしゃぐ姿を見たら、絶対駄目だ、とは言えない。それでも言うことはきいてほしいと願う。

矛盾してはいるが、保護者、もっと言えば親の気持ちとはこんなものなのかもしれないと陸燈は思った。

彼女の親ではないし、頑固親父のようにもなりたくはない。
 
そこまで縛ろうとも思ってはいない。


「じゃあお兄ちゃん、頑張ってね」

「あ、ちょっと待った」
 

離れようとする真空の肩を軽く押さえる。


「演奏が終わったら裏口の扉、ほら、あそこに電気点いてるだろ?出たところにベンチがあるから、そこで大人しく待ってること!」
 

ステージに向かって右側。カウンターのすぐ奥に扉がひとつオレンジ色の電気に照らされて見える。そこを指で示して説明する。

帰りはどうしても入ってきた正面口は混雑する。それを避けるために出るときは裏口を使う。
 
実際、人の流れとは逆になるため、端を歩けば人目も避けられる。


「分かったか?」

「は~い!」
 

返事もそこそこに、小さな体が人混みに紛れ込む。
 
本当に大丈夫だろうかと、まだ少し心配しながら真空の背中を見送る。
 
あっという間に見えなくなってから、ギターケースを軽く弾ませて背負い直し、控え室へ向かう、と――


「お!やっぱ陸燈じゃん」
 

踵(キビス)を返して直ぐに、壁際から声を掛けられた。


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