SOUND・BOND
まあ古い友達であるから、彼が何を考えているのか読めなくても、性格でそれなりに、こういう奴だ、くらいには思い至れる。
その彼は今、人が特に集中して集まっている前の方に視線を向けていた。
さっきの話題は客が増えてきたことに驚き、咄嗟(トッサ)に出た言葉だったが。
「あの子、大丈夫かなあ」
綺麗な黒髪をツインテールにした女の子。
今はこの人混みの中に隠れて姿は見えないが、少女の連れのあの男が印象的だったのかふと思い出された。
「そうだな。ステージ前もかなりの人でほとんど埋まってるし、あんな小さな体じゃあ危ないかもな」
「こっちに連れてきた方がいいんじゃないのか?」
薫季の提案に秋司は苦笑混じりに頷く。
「なに?」
「いやいや。いい心がけだな~と思ってさ」
「また、心配性だな、とか言いたいんじゃないのか?」
「分かってるじゃないか」
秋司の上手い台詞の誘導に、う、と言葉が詰まる。
気にとまったことなら何に対しても過保護になってしまう性格は、今更変えられない。
こうして時折実感させられてしまう彼の言い回しには、もはや舌を巻く。