SOUND・BOND
秋司に敵わないことはずっと前から分かりきっている。だから薫季は改めて諦めの息を悟られないように漏らした。
そして彼の言うとおり――実際には自ら言ってしまったのだが――あの少女のことが気がかりだった。
「AKI。やっぱり心配だから、俺、様子見てくるわ」
「いってらっしゃい」
ひらひらと手を振る秋司を残して、一人で小さな女の子を捜す。
ライブハウスはそう広いとは言えない。初入店した人は必ず〝狭っ〟と一声漏らすことだろう。
だから、少女一人捜すくらいなら難を要さない――
「ちょっとすみません。通して下さいっ」
この人の数でなければ……。
このままではきっと、ぎゅうぎゅうに押されて大変な目に遭ってしまうのではないかと、薫季はなかなか前へ進めない自分のこの状況を少女にダブらせて心配する。
あの可愛い人好きの秋司が一緒に来たがらなかった理由はこれだろう。それとも彼の場合はお子様は圏外ということなのだろうか。
(あり得る……)
手を振って見送っていた彼の姿が、今思うと〝興味ないから〟と言っているようにも感じられた。