純愛ワルツ
でも分かって欲しいんだよ。


モヤモヤしてグチャグチャして

私の中に渦巻く不安の塊を。





「…俺の気持ち、何にも胡桃に伝わってないんだな」


「…茜くんっ!!」




凄く傷付いた顔を向けると

茜くんは私の前から立ち去った。





「胡桃ちゃん。アナタのはワガママよ。自分だけを見てて欲しいなんて、そんなの絶対無理なのよ。望むこと自体間違ってる。

そしてそれを押し付けるなんて…そんなのいつか必ず茜の重荷になるわ」




…私が間違ってるの?



ただ茜くんを好きなだけなのに

こんなに辛い想いをする



私の恋心が間違ってるの?






「…悪いけど慰めないわよ。私は慰め方も謝り方も身につけてないの」


「いらないです」


「そっ。良かった」




酷く嫌われたものね、と薄く笑いながら

天音さんは言葉を続けた。





「胡桃ちゃん。私は大和が嫌いだったら怒鳴ったりしないわ。だから茜と仲直りしてあげなさい」


「天音さん、それって…」


「誰がどう見たって茜の目に私は映ってないわ。だからアナタが不安がる事は何もないのよ」




そうかな…。


茜くんは本当は

天音さんを見てるんじゃないのかな。




でも、今は…



「…追い掛けなきゃ」



ポロポロと零れ落ちてくる涙を拭いながら

茜くんの後を追った。





行き交う群衆をすり抜けながら走っていくと

誰かと電話をしている茜くんの後ろ姿を見つけた。




クイッと服の裾を引っ張ると

茜くんは驚きもせず振り返る。




「…先輩が今日はもうお開きにしようだって」


「そう、ですか」


「送るよ。帰ろっか」




茜くんは私の背中をソッと押してくれる。
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