純愛ワルツ
―ピンポーン…―



「…はい」


「なっちゃん、茜です」


「………」




インターホンに出たなっちゃんは

少し間を置いてから、ブッ!!と通話を切った。




家の中からズカズカと誰かが歩いて来る音が聞こえる。




「…なっちゃん、怒ってますね」


「短気だからね、あの子。でも大丈夫。棗は私に怒れないから」




お義姉様の言葉に少しホッとしていると


乱暴に玄関のドアが開かれた。




「貴様っ!胡桃に何をした!?事によっちゃ三枚おろしにしてやる」




なっちゃんは手に持っている花鋏をカシャカシャと鳴らす。



うん。

なっちゃんならやりかねない。





「棗、理由も聞かずに茜くんを悪者にしたら、私がアナタを百枚くらいにさばいちゃうわよ」


「く…くらちゃん」




不敵な笑みを浮かべるお義姉様に

本気でビビっているなっちゃん。



俺もゾクリとした。





「棗は静かに花の手入れの続きをしてなさい。…さ、茜くんは胡桃ちゃんの部屋に行ってあげて」


「…はい。じゃあお邪魔します」




あのシスコンバカ兄貴を手なずけられるのは、お義姉様くらいだろう…



そう思いながら家に上がる。




すると…


「…2階の端の部屋だからな」



と、後ろからなっちゃんが教えてくれた。
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