元気あげます!巴里編

「僕が掲載してから、よその取材がすごかったんだってね。
彼は相当無理してたのかな・・・。」



「隅田さんのせいじゃありませんよ。
取材の応対はすべて琴美さんの事務所で処理してもらっていましたしね。
検査結果だって異常な数値なんて出てないし・・・。

私のことを思い出したときも突然だったから、きっと今度も。」


ひかると隅田が廊下の待合室でそんな話をしていると、病室からセルジュが小走りできて言いました。


「ひかる、千裕が目を覚ました。
俺の顔を見て、名前で呼んだぞ!」


「えっ、じゃあ・・・」


「ひかるちゃん、よかったね。」


「はいっ」


ひかるが千裕の病室へもどると、お医者さんが診察しているところでした。
そして、診察が終わると退院許可が出ました。


「検査結果は異常はないし、意識ももうはっきりしています。
お友達の名前もスッと出てきたことですし、後遺症はほとんどもうないと思います。」


「あ、ありがとうございます。」




退院手続きを済ませて、セルジュの車で千裕とひかるは自宅にもどることができました。


「千裕はほんとに悪運強いな。」


「おまえが耳元で言った言葉は忘れないからな。」


「セルジュさん、何ていったの?」


「ま、景気づけみたいなもんだ・・・。」


セルジュが何かをごまかしたような素振りに、ひかるは笑いながら台所へお茶の用意をしに行きました。


「『千裕が戻って来ないなら、俺がひかるをもらうからな。』ってしっかり聞こえてた。
それがとっかかりになったのか、あっちの世界へ向かわずに済んだ気がする。」


「千裕・・・」


「なぁ、セルジュ。頼みがあるんだけど・・・。」







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