元気あげます!巴里編

セルジュが仕事場にもどろうと立ちあがったとき、ひかるは思わずセルジュに声をかけました。


「あの、明日ユウヤが田舎に連れて行ってくれるらしいんですけど・・・」


ひかるがそこまで言って言葉を止めてしまうと、セルジュは振り返らないまま答えました。


「日本人は言いたいことを後回しにするだけじゃなくて、わざと言わないことを美徳としているのかな。
俺に来てほしいのか、そう千裕に伝えてくれなのか、はっきり言わないと痛い目にあってしまうぞ。」


ひかるは述語部分をはっきりいえない気持ちを指摘されて、びくっとしましたがすぐに気合をいれるかのように


「すみませんでした。なんでもありません。
さっき話してたことに矛盾していますよね。
自分で決めたことなんですもの、甘えないでがんばってみます。」


そういって、走って持ち場にもどるのでした。


「((そういう意味で言ったのではないのに・・・。
俺に甘えてくれるなら・・・。くそっ、中途半端にSOS投げかけられたら、千裕にいうしかないってことだろう。行き先がわからないし。))」



セルジュは夕方、ひかるが出て行った後に千裕に電話をしました。


「・・・・・そっか。連絡してくれてありがとう。
いつもひかるが世話をかけてしまってすまない。」


「あんたに謝られる筋合いはないよ。」


「いや、立場がもし逆だったらって思えば俺にはあんたみたいなことはきっとできないだろうからさ。
いい人だね。」



「そんな文句は言われ慣れてる!いいか伝えたからなっ。」


「了解。」


((セルジュとは妙な関係になっちまったけど、ひかるがもどってきたらまた説教してやらないと・・・。))
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