陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
収穫した野菜を持って、小十郎の屋敷へと戻った。
ちょうど、門をくぐったところでおはるたちに出会ったので、そのまま野菜を渡して、小太郎と幸姫は部屋へと戻った。

戻っていろ、と言われたものの、何をしていればいいのかと手持ち無沙汰になった二人は、ぼうっと縁側に座って手入れの行届いた庭を眺めて日向ぼっこをしていた。

「こたはさ、もし、戦のない、平和な時代がきたら。何、したい?」

ポツリと幸姫がつぶやく。
小太郎は視線を動かすことなく答えた。

「…そうだな。そんな時代がもし、くるというのなら。諸国をゆっくりと回ってみたいな」

「旅、か」

言われて思わず、国民的時代劇を思い出した。

「各地の悪党を懲らしめながら、全国津々浦々。諸国漫遊の旅」

言って思わず噴出しそうになる。


こたが黄門様?
だめだ、ウケる!


「何がおかしい」

小太郎に言われて、幸姫は慌てて首を横に振る。

「ごめ、なんかよくわかんないけど、笑えた」

幸姫の回答に、小太郎は呆れ顔でため息をついた。

「失礼だぞ」

「…ごめんなさい」

小太郎にたしなめられて、確かにもっともだと思い、素直に謝った。

「しかし、お前の言ったことも悪くはないかもしれないな」

「え?」

「諸国漫遊、世直しの旅」

小太郎がまじめな顔をして言うのがおかしくて。
幸姫はまた、くすっと笑った。


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