あの音をもう1度
そのまま部屋へ駆けあがるつもりだったのに…
“ドンッ”
人とぶつかってしまった。
「奏・・・?」
ここは自分の家であって、声だけで誰だか十分わかってそのまま階段を上がろうとしたが
「奏」
いつもより凛とした声に足が止まった。
「・・・昨日の話だが」
「・・・・」
「無理にはとは言わない。ここには奏の大切なものがあるんだし離れなくない気持ちもわかる」
その言葉は、心を見透かされているようだった。
「けど、奏の未来は無限大だ。それだけは覚えていてほしい」
「っ--」
お父さんの言葉を振り切るように部屋に飛び込んだ。