あの音をもう1度
ピアノを触ることを避けたのは触ってしまったらその衝動が勝ってしまうから。



部屋に入れなかったのは、
また楽しかった頃の記憶が蘇りそうだったから。



楽譜や道具を捨てられなかったのは…どうしても心が、体が否定したから――












ずっとわかってた。


そんな気持ち。



それを今まで認められなかったのは・・・








傷ついた過去があったから――











またピアノを傷つけられる
リスクを背負ってまでピアノを弾こうとするほど私は強くない。


それに幼いころとはいえ、私は半端な覚悟でピアノを捨てたわけじゃない。


悩んで、泣いて…そうやって決めた。


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