あの音をもう1度
「奏?!」



「本当は、ずっとピアノ弾きたかった!」


鈴宮の胸のところに顔を隠して言った。




「・・・・うん」


鈴宮は優しく頷いてくれた。




「でも、怖かった。また一緒のことが起こりそうで」



「うん」



「心の底では誰かに気付いてほしかった。本当の気持ち」



「うん」



「鈴宮」



「ん?」



「…気付いてくれて、ありがとう」



「…あぁ。--忘れんなよ。
奏は1人じゃない。今度は…俺が傍にいるから」



そう言ってポン…ポン…っと
背中を優しく叩いてくれた。


赤子をなぐさめるように…










本当に、ありがとう--…












私はギュッと鈴宮の胸のシャツを握った。


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