飴色蝶 *Ⅰ*
「だから、もう私は
 貴方を愛していない
 
 運転手さん停めてください
 ここで一人降ります

 今から、新しい男と逢うの
 だから、さようなら」

タクシーを降りた庵は
屈んで朱莉の耳元に
小声で言う。   
 
「オマエ、嘘が下手過ぎ」

タクシーのドアが閉まり
庵を残して車は走る。

彼は、その場所を動かずに
朱莉を乗せたタクシーを
見送る。
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