飴色蝶 *Ⅰ*
お店を出た私は、一方向を
眺めながら

夜の風にあたっていた。

そう、この道を、真っ直ぐ
進んで行けば朱莉の店がある。

ここへは何度も飲みに来ている
が、私は彼女のお店の方面へは
絶対に近づかないようにした。

あれから、庵に逢う事は
無かった。

遠くを見つめる菫に
更紗は言う。

「彼、スミレの事、可愛いって
 言ってるよ
 
 素敵な人じゃない
 
 付き合ってみたら」
 
「えっ・・・」

支払いを済ませた、更紗の彼氏
と彼が出て来た。
  
私は、奢ってもらった御礼を
二人に言う。

「ありがとうございました
 
 お酒
 とっても美味しかったです」

「いいよ、また一緒に来ようよ
 それより、まだ時間もあるし
 
 これから
 カラオケでも、どう?」

「行く、行く」

更紗のはしゃぐ声が

夜の街に響いた。
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