飴色蝶 *Ⅰ*
午前2時、携帯電話が鳴る。

イオリの声は、耳に心地よい。

「すみれ、今すぐ逢いたい」

私は携帯から、タクシーの
運転手に行き先を説明して
その場所で、彼が来るのを
今か今かと待っていた。

私のすぐ傍で

一台のタクシーが停まる。
  
車から降りた彼は、お酒に
酔っていて、少し足元が
ふら付いていた。
   
タクシーがドアを閉めて
走り出すと彼は

私を強く抱きしめてくれた。

「すみれ」

庵の手が優しく私の頬に触れ
お酒に酔って焦点の定まらない

とろけるような眼差しで
私を見つめる。

その瞳に私は吸い込まれて行く

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