飴色蝶 *Ⅰ*
ひとりきり

叶わない

やっと、心も体もひとつに
なれたのに、二人で過ごせる
時間には、終わりがある。

庵は今、煙草を手に持ち携帯で
誰かと大切な話をしている。

庵の声が聞こえる・・・

「迎えならいらない
 これから本部事務所へ
 顔を出す、ああ、大丈夫だ
 
 ここの場所は、教えられない
 すみれを危険な目に
 合わせたくない
 
 俺なら大丈夫だ、分かった
 ・・・後で」

電話を切った庵は、煙草を銜え
ながら、羽織っていたシャツの
ボタンを留めている。
  
見つめる私の視線に

彼は、気づいた。

「すみれ、ごめんな
 
 行かなきゃいけない」

庵は、吸殻を灰皿代わりの小皿
に捨てた。

「迎えに来てもらわなくて
 本当に良かったの?
 
 組長が一人でなんて
 ・・・危ないよ
    
 ねぇ、やっぱり
 ここの住所を教えて
 迎えに来てもらう方が
 いいよ」
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