飴色蝶 *Ⅰ*
一時間だけの約束が

二時間になり

二時間だけの約束が

三時間になり

私は

たった五時間で

彼に抱かれた。

彼のペースに填められた
私は、名前しか知らない
彼に身を委ね

熱く、この身を焦がした

ベッドの隣で無防備に
眠る彼の事を

いい人だとは思うが
好きでも
愛してもいない。

私は、浴室で熱い
シャワーを浴びながら

愛の無い行為の全てを
思い出し体の隅々を洗い
自己嫌悪に陥った。

本当の私が、何処かで
泣いてるような気がした

ホテルの前
また会う約束をして
私達は別れた。
  
一度も振り返らずに
走って行く彼の後姿を
見つめながら

私は思う。
< 29 / 488 >

この作品をシェア

pagetop