飴色蝶 *Ⅰ*
私は沈んだ顔つきで
彼女の話を聞いていた。

「シャワーを浴びて
 この服に着替えるといいわ
 
 下着は、新しいから
 気にせずに使って
 
 この服も下着も
 もう返さなくていいから」

「いえっ、そんな・・・
 
 こんな高価なもの
 頂けません」

「本当に気にしないで
 こういう商売をしていると
 一度着た洋服を着る機会が
 無くて困っているのよ
     
 スミレさんに着て頂けると
 嬉しいわ」

「ありがとうございます」

「さあ、早くシャワー浴びて」

熱いシャワーに打たれ
芯まで冷えた体が
熱を帯びて温まっていく。

今日ずっと、庵に触れていた手
は、こうして離れている今も
貴方を求め探している。
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