飴色蝶 *Ⅰ*
灰を捨てながら、庵は問う。

「危険な目に
 合わせるかもしれない
 それが分かっているのに
 
 どうして
 一緒になったんだ?」
  
バックミラーで庵を
見つめながら、要は答える。
  
「ただ、好きだ
 お前と一緒にいたい
 
 その思いだけで突っ走って
 二十歳になるかならないかの
 ガキで所帯を持ったもんで
 
 あの頃の俺は
 正直、先の事など
 何も考えていませんでした」

運転をしながら、要は話す。  

「イチヤの親父の生き方に
 憧れて、この組で一旗上げて
 親父のように本物の男になる
 
 そんな事ばかりに
 必死になって、バシタ(妻)
 には、悲しい思いや
 目には見えない苦労をさせて
 来ました・・・」
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