飴色蝶 *Ⅰ*
私は、庵と繋ぐ手を放し

彼の肩に手を回して

抱きついた。

「逢いに来てくれてありがとう
 私、とっても、嬉しい」

微笑む私の頬に手を触れ
庵が優しく、口づけを
交わそうとした。

瞳を閉じた私は、名前も
知らない男性と交わした
キスの事を思い出す。

身を潜めていた、彼の残り香が
また、香り出す。

私は、庵から離れた。

「イオリ、ごめんなさい
 今日の私は
 キスをするのが怖い」

「お前に、口づけを交わした
 のは、うちの組と敵対関係
 にある会澤組の若頭
 細矢 新(ホソヤ アラタ)
 という男だ」

「イオリ、貴方がどうして
 
 キスの事を知っているの?」
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