飴色蝶 *Ⅰ*
二人は、室内のソファーに
腰を降ろし

庵は、菫に分かるように
説明をした。
 
「どうして、そんな人が
 私にキスなんか・・・」

「すみれは
 そいつの事を知ってたの?」

「シュリさんのお店を手伝って
 いた、あの日、お店の雰囲気
 に酔ってしまった、私は
 一人で外の空気を吸い、風に
 あたっていたの
   
 その時、強風が吹き荒れて
 肩掛けが飛んでしまい
 それを、彼が上手に捕らえて
 くれたの
 
 ただ、それだけなの
 私は彼の事を何も知らない」

「そのホソヤって男は
 お前に、何か話したのか?」

忘れかけていた

彼の声を思い出す。

彼は私に、こう告げた。

『俺の女になれよ』
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