飴色蝶 *Ⅰ*
私を抱く、彼の腕の力は弱まり
庵は私から離れて、低い声で
問いかける。

「すみれ・・・
 俺を、もう
 愛していないのか?」

大粒の涙が、私の頬を濡らす。

こんなにも

こんなにも

貴方を愛してる

『彼は・・・拒否しています
 それは、きっと
 貴女が原因』

私は、震える声で言う。

「好きよ、イオリ
 だけど、それ以上に私
 貴方が怖いの
 怖くて、怖くて・・・
 堪らない
 
 貴方の住む世界は
 私には、恐怖でしかない
 ごめんね、イオリ
 お願いだから、私を
 自由にしてください
 貴方から解放してください」

菫の言葉に、庵は何も言えない
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