前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―


「読んでみるか? 空、可愛らしかったぞ。あたしもなかなかの鬼畜っぷり。早く実現したいものだ」


想像するのも恐ろしいよい、実現なんてもっと恐ろしいよい、鈴理先輩。


俺は引き攣り笑いを浮かべながら遠慮した。

『ご』を語頭に付けて遠慮させてもらった。


何が悲しくてヤられている俺を読まなきゃならないんだ。

許可が下りるならこのノート捨ててしまいたいんだけど。


でもそれじゃ先輩を悲しませるから、ここはグッと堪えてノートを返す。


「よ、良かったっすね。小説書いて貰えて。ただ……俺と鈴理先輩ってのがちょっと」

「嬉しいだろ!」

「ええ。(悲しくて)涙が出るほど」


「ふふっ、あたしも凄く嬉しいんだ。友がこんなプレゼントをしてくれるなんて。これは家宝にしようと思う。そして早く実現したい。空があたしの下で鳴いてくれるその日を」


恍惚に妄想していらっしゃる鈴理先輩に身の危険を感じる。感じちまう。


身震いをして二の腕を擦っていると、俺の視界の端にフライト兄弟が。


チラチラッとそっちに目を向ければ、廊下を歩いているフライト兄弟が鈴理先輩を指差している。

動作で分かる。

デートに誘えとあいつ等は言っているんだ。


酷いことは言っても応援はしてくれているんだよな。


よし、誘うぞ。

駄目元でも誘ってみよう。一緒に帰りましょう、と。


んでもってデートに誘ってみるんだ。


少しは押しを見せて好意を返さないと、本当に男が廃れる。


小さく深呼吸をして俺は妄想に浸っているであろう鈴理先輩に声を掛けた。なんか緊張してきたぞ!


「あ、あの鈴理先輩!」

「ん? どうした空」


「いえ、その」


肝心なところで尻込みする俺のドヘタレチクショウ。

いやいや、ここで引くわけにはいかない。


俺も一端の男。

モロッコで性転換手術を受けるわけにはいかないのだ。


気持ちを引き締めて先輩に言った。


「きょ、今日空いていませんか? 空いているなら一緒に「そーら!」


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