前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―

02. デート当日はKY



□ ■ □


38度5分――だと?


どうやら豊福空はKY野郎のようだ。

体温計に目を落とした俺はガックリ肩を落とした。

目を覚ました時から嫌な予感はしていたんだ。


だって目ぇ覚ましてさほど時間も経たない内に体のだるさを感じるし、背筋はゾクゾクするし、妙に熱っぽいし。

熱を測ってみたら良い感じで熱があるみたいだ。


母さんの風邪が俺に感染ったらしい。


嗚呼、マジかよ。


今日は絶対に学校休めないってのに、大事な約束があるっていうのに、なんで今日に限って熱が出ちまうんだよ。


母さんの看病をしていたせいだってのは察しがつくけど、そうそう風邪なんかひかないし感染らないぞ。


クッソ。

今日は先輩とデートするって約束しているのに……こんなところで風邪を引くなんて俺って超KYじゃないか?


でも病は気から、だしな。

今日も元気よく学校に行こう。


学校に行けば風邪もぶっ飛ぶだろ。


そんな気持ちとは裏腹に体はちっとも言うことを聞いてくれない。


「ゲホゲホッ」


布団の上で咳き込む俺に、すっかり良くなった母さんが大丈夫かと心配そうに声を掛けてくる。


もうすぐ出勤の刻だっていうのに、甲斐甲斐しく俺の額に手を当てて「今日はお休みしないと」小さく息をつく。


大丈夫、学校に行けると言ったんだけど、体温計の結果を見て駄目だって強く言われた。


「学校まで30分以上歩かなければいけないんですよ? 空さん、途中で倒れでもしたらどうするんです。裕作さんだってこの状態での登校なんて許しませんよ。それに周囲にもご迷惑を掛けます。今日はゆっくりお休みになって下さいな」


それを言われちゃぐうの音も出ない。


上体を起こしているだけでもフラフラなのにこんな状態で学校に行ったら、もっと悪化するかもしれない。

先輩やフライト兄弟に迷惑を掛けるかもしれない。


デートのことは気掛かりだけど、デート以上に皆に何より先輩に迷惑掛けるのは申し訳ない。


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