前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
一変して曇りない笑みを浮かべてくる先輩に俺は嬉しくなった。
鈴理先輩、俺のことを気遣ってくれる一方で、俺と同じように不安を抱いていたのかもな。
庶民の俺が財閥の娘と肩を並べることに窮屈な思いをするんじゃないかって。
周囲の目を気にする俺を見て、悲しい思いをしていたのかもしれない。
嗚呼、そうだよな俺だけじゃないんだよな。
俺は財閥の娘と付き合っているし、先輩は庶民の小僧と付き合っているんだ。
身分その他諸々で抱く不安はお互い様なんだよな。
「……お前等、恥ずかしい奴だな」
不意に聞こえる第三者の呆れ声で、先輩を見つめていた俺は我に返る。
俺は今、どんな体勢をしているんだっけ。此処はどこだっけ。
二階堂先輩がいること忘れていたよーなー。なかったよーなー。
一気に羞恥心がアアアアアアアッ、駄目だ、死にたい! 今のなしっ、ナシナシナシナーシ!
「失礼します!」
俺は身を捩って先輩の手から逃れると、ベタンと尻餅をついたことなんてなんのその。
ふらふらっと壁に歩むとそこに手を置いて、ドーンと落ち込んだ。頭上に雨を降らせて落ち込んだ。
いやだってよ、俺、小っ恥ずかしい体勢のまま、先輩にガチ告白しているんだぜ? しかも二階堂先輩がいる前で。
せめて体勢くらい、体勢くらいはさっ……慣れちまった? おにゃのこポジション。
受け身deイケイケゴーゴーポジション、慣れちまったのか。
……くそうっ、やっぱ、モロッコで性転換か。
ううっ、俺を此処まで育ててくれた父さん、母さん。
息子が突然娘になっても子供だって言ってくれますか?
トントントンっと壁を指で突っつきながら、俺は盛大に溜息と唸り声を上げた。
一人称をいっそのこと“私”にでもしてみようか。
それとも“僕”にして小動物系可愛い僕キャラを演じ……童顔じゃないしな。普通顔の凡人BOYだし。
それにさ、俺がそんな女子の心を射止めるような小動物系可愛い僕っ子男の娘っ子キャラを演じても、ぶっちゃけキモイだけだろ。
ナニ? 俺、潤んだ瞳で「センパイ。僕、甘い物食べたいな」とか言うのか? 先輩に向かって? ~~~そんな俺キモイっ、ああっ、キモ過ぎる!