前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―


「他にも三パック入りのヨーグルトをその日に食べてしまいとか、ポテチをその日で一袋食ってしまいとかあるんっすけど、今の夢は板チョコの贅沢食いっすかね……大雅先輩。そんなに哀れむような目で俺を見ないで下さい。俺にとっては贅沢であり夢なんっすから!」


「寧ろ、その夢を今すぐ叶えてやりたい俺がいる。なんだろう、無償に泣きてぇ。ほんっと苦労しているんだな、お前」


「泣きたいほどの苦労もしていませんから! 苦労は……寧ろ、鈴理先輩との攻防戦だったりするんっす。あの、折角なので鈴理先輩のこと聞いていいっすか?」 


「いいぞ」首を縦に振ってくれる大雅先輩に早速質問。

鈴理先輩って昔からあんなに攻め攻め女子だったんですか? っと。


すると大雅先輩は遠い遠い目を作って、「おうよ」肯定の返事をしてくる。

その目が哀愁を誘っているんですけど、なにかエピソードでもあるんだろうか?


「あいつはな、昔っから恋愛小説やドラマ、アニメにハマッてたんだが……それらの影響なのか男を敷きたい願望があってよ。
ほら、あいつって男ポジションに憧れているだろ? 昔からああでさ。俺もとんだ目に遭ったもんだぜ。


例えば……あれは小3だったか。
あいつと遊ぶ約束をして、あいつの部屋にお邪魔させてもらったわけだ。

そしたらあいつ、部屋に入る俺を見るや否や『あんたとあたしは許婚だよな?』って確認してきて。

事実だから『そうだぜ』って頷いたら、『では新婚ごっこをしよう!』とか提案を出されたんだ。

小3にもなってままごとかよーって嫌がったら、『文句を言わずこれを着ろ』とか言ってレースのフリフリエプロンを見せ付けてきた。

おい、なんの真似だよ。冗談なのか。ドッキリなのか。俺が着るのか。

動揺する俺に、ニッコと笑ってあいつは悪魔な発言をしやがった。


『だから新婚ごっこだ。あんたは新妻をやれ。あたしは新夫をやるから。ほら、新妻といえばエプロンだろ。大雅、これを着けろ。なに心配するな。サイズはあたしが調節してやるから。可愛いだろ? 大雅早く着ろ。な? な? なー?』


……必死に逃げたぜ。逃げまくったぜ。プライドのために」


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