前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―


「イタダキマス」


両手を合わせて、バリバリとキャベツを食い始める俺は、気にせず食べて下さいと笑顔を作った。

そしたら先輩が無言で俺に焼肉を数枚弁当に入れてくれた。


「ええっ、ちょ、先輩!」

「いいから食え。それだけじゃ腹空くだろうが。健康男子が食う量にしちゃ足りないぞ。栄養を摂れ」


な、な、なんてイイ人なんだ。


まさかのお肉をご提供して下さるとは、ど、ど、どうしようか。


俺も何か返すべきっ、そうだ、ゆで卵でも。


おろおろおどおどする俺に、


「何もいらねぇから食えって」


なーんて太っ腹なことを言われてジーンと感動。


お肉様とこれから呼んでもいいかな、ミート先輩でもいいかな? 焼肉先輩でもいいかも?


先輩に申し出たら、「なんで肉なんだよ」不機嫌に返された。


理由は一つ、だって肉をくれたから! 


でも先輩にはお気に召さなかったみたいで、大雅先輩と呼ぶよう言われた。


だから俺は大雅先輩と呼び名を変更する。

はふはふっと肉を頬張って幸せを噛み締めていると、


「お前。苦労しているんだな」


弁当の中身と俺を見比べて同情心を向けてきた。


んー、苦労という苦労はしてないんだけどな。


「そりゃお金がないと不便な事ってありますけど、苦労はしていませんよ。だけど、そうだな……お金があれば贅沢食いをしてみたいっすね」

「贅沢食い? なんだ、寿司をたらふく食いたいとか?」


「いえ、板チョコの一気食いっす! ほら、板チョコって升目になっているじゃないっすか。俺、升目に添って一日一枚ずつ割って十日ほど持たせるんっす。
なんかその場で全部食っちまったら、勿体無い気がして。だって一気に食ったら明日にはチョコがないんっすよ? 切なくないっすか?」


今度はいつチョコが食えるかと思うと、つい小さく小さく割って日を持たせようとしてしまう。


だから願いが叶うのなら、板チョコを一気に食ってみたい。


明日のこともなあんにも考えず、がっついて贅沢食い。


想像するだけで至福だ。お寿司をたらふく食べたいとか、贅沢過ぎて恐れ多い!


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