前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
どこから出てくるか分からない反骨精神が、誰が言うことなんて聞くもんかと本体に命令。
俺は携帯から顔を背けた。
なんでワケも分からず誘拐されて、あんた等の言うことを聞かないといけないんだ。
「ほぉ。抵抗するか」
スキンヘッドオッサンが面白そうに笑って仲間にアイコンタクト。
刹那、待機していた仲間の一人、眼鏡オッサンとでも名付けようか、キャツが脇腹を横蹴り。靴先が腹部に入って俺は情けなく転倒。
「空!」
先輩の悲痛な叫びが聞こえるけど、嗚呼、応えられる余裕はない。
今のは効いた。マジ効いた。効果バツグン。
咳き込んで痛みに悶えている俺を足で引っくり返す眼鏡オッサンは、人質をうつ伏せにさせると背中に膝小僧を乗せて、体重を掛ける。
痛みプラス重みに思わず呻き声を漏らす俺の首筋にダガーナイフを突きつけてきた。
グッとナイフの刃先が肉に食い込み、鋭い痛みと一緒にツーッと血が伝う。
「人質らしくしておくことが最善だがな。じゃないとこのナイフ、今度はあの女に向けちまうぜ」
眼鏡オッサンの脅しに俺は一変。青褪めて身を震わした。
そうだ、俺だけじゃないんだ人質は。大人しくしないと今度は彼女が。彼女が。
先輩が傷付くのだけは絶対に許せない。
この誘拐だって、俺ひとりが目的だったのに先輩まで巻き込んじまって。
間接的に先輩の家の名のせいだとしても、彼女のせいじゃない。
くそっ、彼女まで誘拐して欲しくなかった。
諦めに顔を歪めながら、俺は抵抗の一切をやめた。
それでいいのだとせせら笑うスキンヘッドオッサンがイカついオッサンから携帯を取って、俺に歩んでくる。
片膝をつき、「今息子の声を聞かせてやる」と言うや、俺の顔に携帯を近付けた。
コンマ単位で背中に激痛が走った。
加減なしの膝落としが背中に炸裂したんだ。
頭が真っ白になって大きく悲鳴を上げる俺に、「や……やめっ」声にならない声で先輩が懇願を訴える。
何度も暴行を食らう俺に、彼女はガクガクと震えている。
そんな彼女を視界の端で捉えて、俺は苦し紛れに笑ってみせた。大丈夫の意味を込めて。